ノートン・マンクス500cc 市販レーサー
実車について:
ノートン・マンクス(30M)は
世界GP500ccメーカーチャンピオンの獲得こそ50、51年の2年だけですが、
斜陽の英国勢最後の砦として、1960年代後半まで現役で活躍した最も有名なレーシング・マシンです。
1930年代に誕生したノートンOHCエンジンは
戦後、進境著しいジレラ MV モトグッチというイタリアン・ワークスの劣勢に立たされていました。
それを救ったのが古めかしいガーデンゲート型に換わる有名なフェザーベッドフレーム。
1950年ワークスに採用され、名手ジェフ・デュークによって2年連続メーカーチャンピオンを獲得。
彼は40M(350cc)でも51年、52年ワールドチャンピオンを獲得しています。
2年後には市販レーサーにも採用され、ヒーローマシンは欧州、米国で大いに受け入れられる結果となりました。

ワークスは1955年まで、市販レーサーは1962年で生産を中止しましたが、
芳醇なワインのごとく、熟成された一線級の戦闘力を持つ市販レーシング・マシンとして
マンクスの第1線での活躍は60年代後半にまで及びます。
ちなみに1960年世界GPで23戦中21勝というMVの圧勝に一矢を報いたのがこのノートン(ライダーはJ.ハートル)でした。

多くのプライベート・ライダーを育て、500ccクラスで最も多くのエントリーを受け、
長く長く愛されたイギリスの誇る名車です。
製作にあたって:
マンクスはその長い生産期間による改良や、レース仕様により様々な形状のエンジンやタンクが見られますが、
今回は基本的に61年のモデルを元に、様々な実車写真を見比べて製作してみました。
迫力溢れる、エアースクープ付きのダブルドラムブレーキ、バンク角を稼ぐためのフラットなメガホンマフラー、
深いフィンを持ったシリンダーなど、クラシックレーサーの中心的モデルを再現します。

これまでは、自分流の模型のスタイルとは何か?ということを考え続けていましたが、
前回のYDS1クラブマンレーサーを製作する中で、
自分なりの方向性を定めましたので、迷いはなく「細部にこだわって」製作を進めました。
模型全体としての魅力に欠けようが、ポイントがなかろうが、迫力がなかろうがお構いなしです。
「清く正しく美しく!」っと清潔・正確・精密に仕上げることを念頭に作り続ければ
それなりの模型が出来る日も来ることがあろうと開き直ることにしました。
文章も今までは遠慮がちでしたが、ほんのちょっとですが地を出してみようかと思います。

                   Manx Super Detail
今回こだわったのは金属パーツの自作です。
エンジンフィンはもちろん、マフラーはアルミ棒とアルミ板を巻いて製作、ダブルドラムブレーキの諸部品もアルミ板からの自作、
クラッチ、ブレーキのレバーやペダル類もホワイトメタルの塊から削りだしました。

またまたZipp’s斎藤さんお世話になり(自分だけで作れ!という批評にも耐え)ホワイトメタルで型を取ってもらった
部品も数多くあります。

何と言っても秀逸はチェーンですね。彼にこれを作って貰わなかったらこのマンクスは永久に製作されなかったでしょう。
そして、タンク留めやフューエルコックなどの小部品に拘りました。目立たなくても、模型の雰囲気に影響がなくてもいいのです。
近くで見て凄いと誰かが一人でも言ってくれたら嬉しいなぁ… 
カウル、タンク、シートと大きな部品も自分なりに美しいと思える形に変更しました。
タンクが流線型になり過ぎてマン島用タンクの迫力は失われてしまいました。燃料ギレで走り切れないよ!などとは言わないで
下さいね。デカールも今回は自作です。ちゃんと自作ですよ。他人まかせではありません。


(1)エンジン周辺
 ・エンジンフィンの作成では、エキパイが出る上部の小さなフィンを真直ぐに揃えるのが大変でした。
 ・エンジン部のマイナスネジはアルミ、真鍮線で作ってあります。
 ・各種パイプの取り付け部分が自分ではいい感じだと思っています。得意分野ですね。
 ・深いエンジンフィンを通してシリンダーや向こう側が見えるのが気に入っています。
 ・チェンジペダルの各部分は、ホワイトメタルから削り出し。ギアボックスをステーに固定する部品は少々細すぎましたね。
 ・プライマリーチェーンは、斎藤さんにホワイトメタルで抜いてもらったチェーンを加工しました。
  リアブレーキペダルもホワイトメタル製。

(2)ステアリング・ヘッド周り
 ・各レバーはホワイトメタルの塊から削り出しました。
  そのレバーを受けるステーやタイミング・レバーもメタルを加工しています。
 ・ブレーキには2本のワイヤーがつきますので、ブレーキレバー上部から1本引っ張る方式のものを採用しました。
  ここの取り付け部分は自分で気に入っています。
 ・クリップオンハンドルバーは、斉藤さんにコマンドのキットのものをメタルで複製してもらいました。
 ・カウルはパテを盛って形状変更。スクリーンは透明プラバンを虫ピンで留めてあります。


(3)タンク
 ・タンクは形状を修正しデカールは自作しました。銀塗装が上手くいかず相当苦労しました。塗装はヘタッピで嫌になってしまいます。
 ・タンク留めは、薄いゴム板とアルミ板を張り合わせたもの。ゴムを使用することで実車のようにしっかりタンクがとまります。
 ・その留め金を作るのに苦労しましたが、よい雰囲気を出していると思います。実際にこの留め金を可動させてタンクを留めています。
 ・見えにくいですが、オイルタンクのキャップ周辺はフレームから修正しました。


(4)フロントブレーキ周辺
 ・リムはプロタージャパンの素晴らしいアルミHリムを採用。
 ・エアアースクープはアルミ板を強引に曲げて形を整え、虫ピンで留めてあります。実物はもう少し開き気味のようです。
 ・ブレーキの可動部分は、洋白板と真鍮パイプで作り、アルミ板を加工した部品にビスで留めてあります。
  この方法はチェンジペダルやリアブレーキにも使用していて、一応可動します。
 ・写真では見えにくいですが、フロントフェンダーをささえるステーをアルミ板で作ってあります。複雑なカーブの組み合わせで、
  この部品1個を作るだけで丸1日かかりました。
  このステーはフェンダ、フロントフォークにビス留めしてあります。が、取付け終わった瞬間にフェンダーが割れました。
  古いキットは要注意です。


(5)後輪周辺
 ・リアサスは真鍮、アルミパイプを組み合わせて自作しました。バネはアルミ線を巻いて作ってあります。
  サスの取り付け部分も実車どうりにしてあります。
 ・ドリブンギアーとチェーンもZipp's斉藤さん製作のものを加工して作ってあります。この雰囲気は抜群ですね。
  滞っていたManx を再開できたのは、このチェーンのおかげです。
 ・メガホンマフラーはアルミ板を巻いて作りましたが、もう少し大胆に開けばもっとよかったでしょうね。

Manx in Progress
製作を終えて:
開き直って作ってみても、迫力に欠け面白みがないのは相変わらずでした。
メガホンはバーンと大胆に開き、かつ跳ね上げて… 
カウルも丸めないで鋭角にすれば… 
よく見ればエンジンが小さ過ぎるじゃないの… と反省ばかり。

でも念願の初プロターを完成させ、今までのちまちました作品から比べれば少しは成長しただろうと
自己満足に浸っております。
金属加工技術も向上しましたしね。

キットについて:
プロター初期の名作です。
リバースコーンのない裁ち落としメガホンマフラーと 
7インチ・ダブルパネルのフロントブレーキをモデル化していますので 
30M(500cc)の1961,2年発売の最後期市販レーサーです。

キットをそのまま作ろうとすると 
プラの塊にしか見えないエンジンブロックや 
初期製品でのプーリ状になったドライブ・ギアなどが辛く感じられます。
大人趣味のためのベースキットとして 
どこまで手を入れるかをモデラーに迫ってくる点では 
今のT社A社製品などとは違ったジャンルに属している模型キットと 
いえるでしょう。

このSUGITA氏の作例まではとてもお勧めできませんが 
「手を入れれば入れるほど、仕上りの雰囲気が良くなる」ことは確実です。
ぜひ皆さんの製作レベルに合わせて楽しんでもらいたいキットです。

Kim's House Garage Owner
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