当ガレージ・コレクションから、こいつは珍品だと思うキットをご紹介します。
あくまでもオーナーの個人的思い入れですので、解説の不備や誤りはご容赦ください。
PROTAR
プロターのHarley Davidson
ProtarがHarley Davidsonを作っていた。
最近、P.J.社の岡部さんよりプロターのハーレー・シリーズを多数頂戴した
のでご覧に入れる。
日本ではほんの僅かな期間だが市販されたことがあり、私もMr.Craftや
YellowSubmarineで見た(あやふやな)記憶があるので、何がこれが珍品
なのかと思われる方もいると思うが、これはまさしく珍品なのです。
それは、これがプロター「ブランド」であるということ。

1980年代あたりまで、こういった模型や玩具の世界にまで、あまり版権
や著作権を問題視する実車企業は多くなかったらしい。
つまり模型メーカーはホンダだろうがベンツだろうがフェラーリだろうが、
模型にし放題。堂々とその車名を謳ってBOXアート描いて商売できていた
訳だね。恐らく、正直者のT模型が模型化にあたり、その実車企業の許可
を得ることを始め(ST社長の著書にグッドイヤータイヤに許可をお願い
して感激された話が載っている)、某かの認可料を支払い出したというのが
始めではないのかなあ。

そして実車企業側にも徐々に著作権とか知的資産、ブランド資産(Brand
Equity)という概念が成長してきた。
つまり模型化に当っては必ず、決められた版権使用料を支払う、売れたら
売れた分だけのパーセンテージ(Running Loyalityという)を支払います、
というライセンス契約を行うということだね。

これはこれで(実車の人気にオンブして儲けるんだから)当然のことなんだ
が、今まで自由に(勝手に)模型化できていた模型屋さんは苦しいわな。
小さいところはとてもやっていけない。
困った問題
それともっと問題なのは、実車企業と模型メーカーが手を組んでその実車の模型化権・版権を独占(EXCLUSIVEという)してしまって、
他社を締め出してしまうというやり方が出てきたこと。
有名なのはフェラーリ社の模型化版権をアメリカのマテル社が一社独占して他社に一切作らせない、売らせないようにしたことは記憶に
新しい。このために多くの模型メーカーがフェラーリ製品を廃番にしてしまったんだ。
今はマテルと契約すればフェラーリも模型化できるようになっているらしいとか、フェラーリがマテル以外にもライセンスを与えるように
なったとか言われているが、相当面倒だし高い版権料を支払わなくてはいけないらしい。(私 業界人ではないので、あくまでも噂話よ)
イタレリのハーレー
さあそこでHarley Davidsonはどうなんだ、というとこの模型化権が中々やはりうるさくて高価で大変らしい。
フェラーリやらポルシャやらは模型にすれば結構な販売量が見込めるんでしょうが、バイク模型はファンの数そのものが少ないから、販売
数量も知れているでしょう。そんな事情なのに高い版権料は中々払いきれないよね。
左は最近イタレリから再販されたESCI
のハーレーのWLA45です。
当時の右のESCIの箱にはハーレーって
ちゃんと書いてあるのに、イタレリには
どこを見てもハーレーって記載されて
いないでしょ。
版権料払うの厭だったんですね。払う
ほど売れないと判断したんでしょう。
バイク模型が全部こういう形で模型化
のライセンス契約をしないと販売でき
ないことになると、 過去の製品の再販
などは、なかなか困難だろうと想像でき
ますな。
左はイタレリから再販されたESCIのハーレー。U.S. WWII MOTORCYCLEって何だ。(笑)
ESCIの後オーロラで再販されたときもちゃんとHarley Davidson WLA45って書いてあったのに。
IMEX ハーレー
このプロターのハーレーはアメリカはフロリダの玩具商社IMEXからの
依頼でプロターが下請け製作したものなんですね。
IMEXがハーレーの模型化権を買ったんですから、当然PROTARの名前は
どこにも登場しない。(同様に今井の1/12ハーレーシリーズもアメリカ
ではIMEXブランドで販売されていましたね)イタリー国内ではプロター・
ブランドで売っていいという契約になっていたようです。
そういう訳でこの7種類のハーレー・シリーズが揃ってプロターブランド
でLINE UPされている。
でも正規のプロター・カタログには一切登場しない、どちらかといえば
マル秘モデルのような扱い。だから珍品なんです。

下は私が以前アメリカのオークションで手に入れた 
IMEX社の883。中身も箱も全く同じです。
当たり前か。
7台のエボリューション・ハーレー
完成写真を見てもパーツの精度を見ても素晴らしいキットであることが分かります。
今のエボリューション・ハーレーを作りたい人には最適なキットでしょう。
基本設計は勿論K.O氏ですから、出来は素晴らしい。正に今どき正統派のスケールモデルで、手を加えないでも素晴らしい完成品になる
キットです。日本でも一時売られていたようですが、やはり日本におけるハーレーの版権の問題なんでしょうか、店頭からはいつの間にか
姿を消してしまったようですね。残念だなあ。
XLH Sportster 883 Hugger
XLH Sportster 1200
素晴らしい完成写真が入っていました。
FXSTC Softail Custom 
FXSTS Springer Softail
FLSTN Heritage Softail Special
FLSTC Heritage Softail
FLSTF Fat Boy
後日談
さてこのIMEX・PROTARキットは後の話があって、IMEX社は既にこのプロター・ハーレー販売を止め、今やその販売は同じくアメリカの
TESTORS社に移っています。(中身の供給はイタレリからということになるんでしょうね)
下がそのパッケージ。「リンカーン・ミント」という(何かダンバリー・ミントやフランクリン・ミントを思わせる) ちょっと高級イメージ
のブランドから登場しています。
そしてテスター社はそのパッケージに、以下のように誇らしげに書いているのです。
Testor has introduced a line of highly detailed 1/9 scale Harley motorcycles.
Officially licensed by the Harley-Davidson Company.
やはり 「ハーレー社」 からのオフィシャル・ライセンスは必要なんですね。

何と日本での提携先は今井科学だった!
プロター・ハーレーの件でCOSMO'S FACTORY 千田さんからメールが入った。
ホームページに載っていたハーレーのことですが、今は亡きイマイから出ていましたよ。
イマイのロゴの下にPROTARの文字も入っています。
メイド・イン・イタリーとなっていますが、箱の反対側にはメイド・イン・
ジャパンになっている変な表記です。
あとプロターらしからず、タイヤが普通のゴム製の様です。

チラシが入っていて、それによると6種類出ていたようですが微妙にラインナップの表示が違い、スポスタ1200はラインナップ
されていないようです」

イマイ・ハーレーのBOX ART。
表面にはどこにもIMAIのロゴ表示はない。
側面には遠慮がちにIMAIのロゴ表示。その下には丁寧にプロターの住所まで書いてある。
確かにこちらは
メイド・イン・イタリーと「箱詰め日本」と記してあるのだが・・・・。
ところがこちらはメイド・イン・ジャパンという記載です。
可笑しいね。
チラシに「日本のみでAvailable (購入可能)」とわざわざ書いてあることによって
ハーレーから認可されたイマイの販売権は日本国内に限られていたことが分かる。
まさしくプロター製ハーレー
なるほど!まさしくこれはプロター製ハーレーです。
IMEXの依頼で作ったプロターの1/9ハーレーは当時1/12の大展開をしていたIMAIが日本での販売を引き受けていたのですね。
私は、1970年代後半から1999年まで20年以上模型作りのブランクがありますので、このイマイの1/9キットは全く知りませんでした。
そうですか。実際に売られていたんですね。
サイト仲間のUrasanからもイマイのものと同じですか?なんて質問来てましたが私イマイは1/12だけだと思ってました。
不明を恥じなければなりません。
写真ではLICENSED BY HARLEY DAVIDSONと入っていて日本でのハーレーの模型化権を今井科学が持っていたことが分かります。
1/12も正規のライセンス商品だったのですね。それにしては妙なカスタムやら変な軍用が多かった気がしますが。(笑)
真相は分かりませんが、普通に考えれば今井の1/12ハーレーをアメリカ国内で販売していたIMEX社からの紹介によるものと思われ
ますが、プロターとIMAIが直接交渉したのかもしれません。
今井科学とプロヴィーニさんの結びつき?考えにくいなあ。(笑)

                                             資料&写真提供:COSMO'S FACTORY

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