世界初のバイク・プラ模型キット レベルのトライアンフ・タイガー100 1/8
レベルは偉い。
アメリカ・レベル社は、1950年代に世界で最も早くプラスチック模型キットを創り販売
した偉いメーカーです。
そして、世界各国にレベルブランドをライセンスし、プラ模型を普及させました。
それから半世紀、多くのメーカーが生まれ、そして消えていった中、当時のビッグブランド
「モノグラム」社を吸収して、いまだに業界トップの一員として頑張っています。
それだけでも偉いのに、1960年代の始めには、なんと世界初の1/8精密オートバイ模型
キットを誕生させるという偉さ。
レベル社がなければ、バイクのプラモデル・キットは生まれていなかったかもしれません。
本当に「アンタはエライ」

Tiger 100
その栄えある世界第1号のバイク・プラ模型がこのトライアンフ・タイガー100です。
アメリカ人の魂ともいうべきハーレー・ダビッドソンを押さえて、このトラが第1号に
選ばれた理由は、当時輸入スポーツ・バイクとしてトライアンフの人気が高かったこと。
その頃ハーレーはヘルス・エンジェルスなど暴走族のバイクとして、あまりよいイメージ
を持たれていなかったこと、などが想像できますが、真相はわかりません。
勿論、後年ハーレーもモデル化されます。

キット
キット内容は、スケール的に少々大きい(1/7.5ぐらい)こと、細部のデッサンの狂いなど
難点はありますが、全体的には実に見事なもので、とても40年前のキットとは思えません。
全体構成、ディティール・パーツの再現性など当時のレベル社の技術力には目を見張ります。
当時のレベルやモノグラムにいかに優れた原型製作者が多数いたか、という証拠(プロター
JAPAN 岡部社長談)です。
今回はストレート組みで当時の雰囲気を、と思いましたが、折角の機会でもあり、気になる
個所をあちこち直して、世界最初のバイク模型キットに敬意を表しようと思っています。

本国版パッケージ
日本発売版 後期パッケージ
(当時グンゼ産業扱い)

最初の製作過程  2002年4月中旬
実は3月中旬から。
このキットの構想を練り始めたのは3月中旬でした。
Sugita氏がYDS1を始めたころです。
実はプロターのヤマハ・レーサーYZR500を作りたかったのですが 
全く資料が集まらず、仕方なく次善の作で、
以前から一度は作るつもりだった 
このT100に決定。
暫くはこうして箱を開けて、キットのパーツを何度も何度も見て 
怪しい個所の確認やどこをどうするか、
なんて構想を練っていきます。
いえ、決してサボっているわけではありませんよ。
最終ロットに近い再販物とは言え 
パーツの状態は全くの新品で綺麗なもんです。
相当に怪しい。
まずフレームを組んで様子を見ますがまず
全体に大きい。
タイヤサイズに合わせて縮尺を見てみると
1/7.5ぐらいになりますが、これは直しようが
ないので諦めます。
それにフレームのバランスやフロントフォーク
の長さなどが変です。
タンクも寸詰まりで丸過ぎるし、後輪のノビー
タイヤはいいとしても、前輪タイヤは細すぎます。
ウーンこれはえらいことになったなと思いました
が後の祭り。なんとか修正しながら進みましょう。
修正ポイントを発見する。
実車の写真とSugita氏が送ってくれた素組みのキット写真とを比較して見ると、かなりの個所に手を加える必要があることが判り
ます。なんといっても低く伸びやかな実車に比べキットは背が高く前後に押しつぶされたようです。
特に気になるのが (B) のフォークの高さ。(C) (D) (E) で構成されるエンジン・フレームの間延び。(F) のタンク形状 などです。
(G) のシートも薄っぺらな リプレース・パーツのようで気になります。(世界最初のキットですから余り文句を言ってはいけません)
フレームを修正する。
実車の写真から寸法を割り出してフレーム修正を
します。
主にはエンジンフレームを縮めて後部フレームを
伸ばすこと。ライトのナセルの位置を大きく下げる
ことの2点がメインの作業でした。
まだ多少伸びやかさが足りないような気もしますが、
一応実車寸法に近づけて大分良くなりました。
しかし前輪タイヤの細さは気になりますね。
また、この修正によって各パーツの取り付け位置や
寸法が影響を受けて変ってきますので後の作業は
大変そうです。
まあ得意の現物合わせで行くことにしましょう。
第2回目の製作過程  2002年5月20日  
エンジンを作る。
キットのエンジンはフィンの彫りも深く、そのまま作っても
充分合格点はあげられます。ただフィンの枚数が一枚足りない
ことや、シリンダーの横から覗く前後のプッシュロッド・カバー
の円柱が見えないなど問題点もあり、この際ですからやはり
フィンは自作することにしました。
キットを参考に寸法を測り、簡単な図面を引いてから0.7mmと
0.5mmのアルミ板に貼付け、切り出していきます。
歪んでしまったものはペンチとヤスリで平らに修正。それを
洋白線に通して組み上げます。
クランクケースとシリンダー・ベースを繋ぐボルトが全く省略
されていますので、それを再現して一応形にします。
シリンダー部分は鋳鉄製、ヘッドはアルミ製ですので一応色を
塗り分けてみました。
E.ターナーの作ったスピード・ツイン以降の2気筒エンジンの
カムカバーは複雑な形をしており、トラの特徴でもありますので
オイルラインやタペット・カバーなどをしっかり再現します。
大体の完成が一番下の写真です。
フィンの作り直し!?
うまく出来たと思ったんですが、修正したフレームに載せると
背が高すぎます。もう一度作り直しになりそうです。やれやれ。
タンクを修正する。
タンクもかなり形が違いますので修正します。ポイントは前後に長さが足りないこと。トラのマークが下過ぎ、後ろ過ぎることです。
マーク位置を直す。
トラのマークをホワイトメタルなどで作れればいいんですが
そんな技はありません。
エイと大胆に切り取って、位置をずらして貼り付け直します。
幅の広すぎる4本のラインも後で金属線で付け直しますので
全部綺麗に取り去ります。
前後長を修正する。
タンク後部を切り取り、約3mmスペーサーを入れ伸ばします。
そのままだと後ろが細くなりすぎるので割を入れて、後部を
少し広げます。このへんは自分の感覚でやっつけです。
後部を中心にポリパテを盛り上げ形を整えていきます。少しトップを削って、厚みも薄くします。
それにしてもニーパッドぐらい別パーツにしてくれていたら
いいのにね。余計な修正の手間がかかりますよ。
第3回目の製作過程  2002年6月18日  
6T サンダーバードに決定。
いろいろ資料を調べた結果、こいつはタイガー100でなく
その後大量にアメリカに上陸した
6Tサンダーバード(650cc)らしいことが判明。
フレームから全て純正色のシルバーブルー1色で
仕上げることにしました。
タイガー100からの主な変更点はシングルキャブであること。
鋳鉄ヘッドなこと(アルミヘッドはT100もオプション)
ですから、まあ簡単といえば簡単に直ります。
右写真はタンクのラインをアルミ線で引き直したところ。
下の写真はエンジンフィンの背が高すぎたので作り直し、
新たにブラケットを作って仮組みしたところ。
何分フレーム修正が悪影響を及ぼして、
現物合わせでないと駄目という厳しい状態が続いています。
まだまだ先は遠そうです。
ちょっと海外に出かけていて随分間が開いてしまいましたので、一気にペースを上げてやっつけていきます。
本来はもう少し各部品を完成させてからアッセンブルしたいんですが、なにせ組み上げないと次の部品寸法が出ませんので仕方あり
ません。しかしゴッドハンドSUGITA氏の仕上げと比較すると仕上げが荒っぽいね。まあ技術と性格の差でしかたないですな。
エンジンの完成と細部。
エンジンを完成させてしまいましょう。
英車のエンジンの特色、複雑なオイルラインを再現しまして、
タイミングチェーンカバーをアルミ箔で処理。
一番やりたかったサイドの▼バッヂを作ります。
これはトラ・エンジンの重要アクセントなのですが、ディカール
もついていませんので、自分で版下を作って印刷。
プラの透明薄板に貼って、極細虫ピンで止めます。
廻りのビスはアルミパイプを埋めます。
後はベタベタと汚し汚し。
なかなか良い感じになってきました。

それにしても細かい部品の自作が多くて参りますね。
フロント・フェンダーも長さが足りず、途中を繋ぎましたよ。
第4回目の製作過程  2002年7月9日  
あれこれ塗ったり作ったり。
いよいよ佳境に入ってきまして、本当はとても
楽しいはずなんですが今回はえらく苦労しています。
全体にデッサンが狂っているのを修正したため
各パーツも必然的に修正するという面倒なことに
なっているからですね。
いろいろ修正を終えて塗装したパーツが左です。
ギアとチェーンを作ります。
1/8ともなると各部品は相当大きく、キットのまま
では使えないものも沢山出てきます。
特にこのチェーンとギアは、ブラケットまで一体成型
のもので使えません。仕方なく7mmのアルミ板から
ブラケット、ドライブ&ドリブン・ギアを削ります。
チェーンはプロターの組立式チェーンを始めて使用
しましたが、あまり綺麗にはできませんでした。
「まっ いいか」 なんて、いい加減な性格ですね。
経年変化に泣く。
出来上がったチェーンを組み込み、
ボディのアッセンブルに掛かります。
おお上手くいったかなと思っていたら
大変なことを発見。
あちこちのフレームが破断しています。
まさしく数十年経過したプラスチックの
経年変化でモロクなっているんですね。
それに無理な修正を加えた
せいでしょう。
折れる、繋げる、また違う個所が折れる
の繰り返し。
折角スラッとした後部フレームが
凸凹になっているのは
オールドルックス、中古車風仕上げ
といってもみっともないですからね。
それに修正しているうちに
フレーム全体が歪んできてしまいました。
この状態からでは、もう修正は不可能
ですので、泣く泣く諦めます。
<教訓>     
古いプラモデルは無理な修正を
してはいけません。   
シートを作る。
気を取り直してシートを作ります。
キットのシート(左端)はカスタムパーツ
風のシンプルなもので、形状も違い、
クッションサポートもありません。
プラバンの0.5mmを切り抜いて、英国車
風の大型のシートを作ります。
曲面はポリパテの盛り上げ。
真ん中左はアルミ板のクッション金具。
完成後は見えませんのでいい加減です。
右写真が完成。クッションは黒く塗り、
シートは黒皮を貼って出来上がりです。
最終の?製作過程  2002年8月5日  
いささか疲れ果ててしまいました。
もう5ヶ月もこいつに取り組んでいますが、まだ完成しません。
早く早くと気は焦るのですが、修正や治療が多すぎて同じことばかりやって
いるようです。
それでも細々とパーツは作っていまして、左はタンク上の荷物ラックです。
左がキットのもの。よく出来ていますが寸法が違います。右が自作のもの。
タンクの完成
ようやくガソリンタンクが完成しました。 実車のトラ・ファンが見たら
怒られそうな汚い仕上りです。勿論オールドルックス仕上げで盛大に汚し
ましたが、接着剤や手垢で勝手に汚れてしまった部分も多くあります!?
ホイール&タイヤの完成。
ホイールのセンターリブを車体色で塗装。
真空蒸着のメッキがまだ残っているので、今回は
アルミ箔貼りはなしとしました。
なるべく手を抜いて効果的に見せられれば
それに超したことはありません。
小型旋盤を買っちまった。
玩具みたいな小型旋盤を買いました。
前々から欲しいと思っていたんですが、全くの初心者
ですから、ねじ切りできるような本格的なものは諦めて
木工金工兼用の安いやつで我慢しました。
取りあえずトラのマフラー2本を削ってみた結果では、
慣れれば、相当使えそうな機械であることが判明。
キットのもの(上)と比較。
その旋盤で削りだした消音器と手曲げのパイプです。
なかなかいい感じだねと思っていますが・・・。
最後の?仮組み
もう何回仮組みしたでしょう。
するたびに壊れて泣かされま
したが、これが最後の仮組み
になってくれるといいなと
思っています。
これだけ苦労したんですから、キットをそのまま組むよりは
大分いいバランスになって
いることを大いに期待して
いたんですがどうでしょうか。

さて今年の夏は暑さもハンパじゃないですが、なんとか
8月中の完成を目指して
頑張ります。

皆様も暑気中たりしません
ようお元気で夏を乗りきって
ください。
最終のおまけ作業  2002年8月25日  
ヘッドライト・ナセルとフロント・ブレーキ 
この時代のトライアンフを特徴つけているヘッドライトナセルは 
メーター類やスイッチが並んでキーポイントです。
キットのデカールは使えませんので 
スミス製のスピードメーターとアンメーターを描きおこします。
メーターのリムは洋白線を丸めてハンダ付けしたもの。
ハンドルバーもアルミパイプからの自作です。
前輪はフェンダーの風切りを作り 
ブレーキ関係をそれらしく仕上げます。
そんなことで2002年8月26日完成しました。
6T サンダーバードとして ガレージ1に収納済みです。