トライアンフ6Tサンダーバード
実車について:
6Tサンダーバードは、第2次世界大戦後トライアンフ社の 
対米輸出戦略から生まれたものです。
名設計者E.ターナーが1937年に生み出した 
500cc2気筒のスピードツイン(5T)は 
軽く、安く、速く、大好評で最大排気量車として英国内を席巻します。
それから生まれたタイガー100も 
1946年マンクスGP優勝の栄冠を勝ち取ります。

しかし、アメリカでは排気量1,300cc重量340kgクラスの 
インディアンやハーレーが王者として君臨し 
小さなバイクは好まれませんでした。
E.ターナーは懇意のアメリカのディーラー ビル・ジョンソンJRと協議し、
5Tの63×80mmのボア・ストロークを71×82mmにボア・アップし、排気量649ccにアップさせた
6Tを誕生させ、主として対米輸出に当てます。
34psという控えめな数字ながら、
175kgという軽量の車体でトップスピード171kmというトライアンフ歴代最速のこの6Tサンダーバードは、
スポーツ・レ-ス好きのアメリカ人のハートを捉え
この輸出戦略は大成功で以降トライアンフを中心に英国二輪車の米国市場は急拡大します。

発売は1949年。
やがてこれをベースにしたT110タイガー(1954年発売)や、T120ボンネビル(1959年発売)といった
よりスポーティーな高性能車の発売により、次第にツアラーとしての性格を強めると同時に
スポーティさを失って人気は低下し、1966年生産中止されます。
今回は、6Tの特徴を最もよく表していると思われる
アマル・シングルキャブ、鋳鉄ヘッド、スプラング・ハブ、ナセル型ヘッドライトを装備した1951年の実車を
モデル化してみました。



製作にあたって:
ご承知のように、オリジナル・キットはレベルのタイガー100ですが、
今回は、タペットカバーをノーマルにする、シングル・キャブに戻す、純正シートを作る、
塗装をフレーム一体のトラ純正ブルーシルバー色にするなどして、
よりオリジナルに近い当時の(英国ナンバー付の)6Tサンダーバードとしてみました。
タイガー100を戻すなら、5Tスピード・ツインだろう
とも思ったのですが、戦後のスピード・ツインは資料が手に入りませんでしたのでやむを得ずです。
製作過程に関しては別頁を見ていただくとして結論は
「古いキットを作るのは大変」でした。
相変わらずの汚し中古車仕上はまあいいとして、経年変化からフレームのあちこちが折れる惨事に、
もう瞬間接着剤の塊のような汚さと成り果てました。

そんな最中にゴッドハンドSUGITA氏の清潔・精密なマンクスの見事な仕上りを見せられて、
さすがの私も、ちょっぴり自信を失いましたよ。


Triumph T100 in Progress
キットについて:
私の青春期、バイク・プラモデルの最高峰は 
レベルのこの1/8シリーズでした。
高価でしたが、今主流の1/12と比較すれば大きく、迫力があって 
当時としては精密度も素晴らしいものでした。
決して作りやすいとは言えませんが 
それだけに1台作り上げたときの充実感、満足感はたっぷり味わえました。
今の子供たちにもこんなキットで模型入門させてやれたらなぁとしみじみ思います。

このトライアンフT100は 
バイク・プラモデルとしては世界初の価値あるキットで 
まあこんな凄いキットを40数年も前に良く作ったな 
と思わせる素晴らしいものです。
しかし、今の目で細かく見れば、スケール、フレームデッサン 
各部品のサイズなどがおかしいこと。
カスタム化された個体をモデル化したためシート形状が違うことなど 
そのまま組み立てるには多少勇気がいります。

上:アメリカ版パッケージ 
下:日本版パッケージ(グンゼ産業) 

「不思議な話」:
リンドバーグ
というメーカーが、同じこのトラT100を1/16でキット化 
していますが、欠点も含めて全くこのレベルのキットの同一縮小版なのです。
原型師が一緒なのか?あるいはレベルが自社のスケールダウン化を 
許可したのか?何れにしても不思議な話だと思っています。

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