ヴィンセント レッド ラパイド (通称赤ヴィンセント)
実車について:
1950〜1960年代の間「最速市販車」の地位に座り続けた栄光のモデル、ヴィンセント1000ccVツイン。
ハワード・レイモンド・デービスによって創設されたHRD社を買い受けたフィリップ・ヴィンセントとフィル・アービングの
2人の天才が生み出した歴史的な名車です。
トレーシング・ペーパーを誤って逆さにおいたという偶然から産まれた47度Vツインエンジンを搭載し
1930年代にすでにモノクロスを先取りしたようなリアサスペンションが採用されたヴィンセント・シリーズA ラパイドは
45ps/5500rpm、最高速170km/hの高性能を誇り「唸る野獣」というニックネームを授かりました。
また同時に「配鉛工の悪夢」とも呼ばれましたが、それは外部取り付けのオイルラインの複雑さゆえででした。
このエンジンの設計が改良され、更にエンジン自体をフレームの一部として活用した新たなモデルがシリーズB。
更にガーダーフォークをガードローリックと呼ばれるダンパー機能を搭載した新しいフォークに改良したモデルがシリーズCです。
前後輪にダブルのドラムブレーキを装着し
世界初のタンデムシートなど様々なアイデアを盛り込んだこれらのモデルに更に改良を加えた
48年のヴィンセント・ブラック・シャドウは
それまでブラフ・シューペリアSS100に与えられていた二輪のロールスロイスの称号を授かるなど、余りにも有名です。

シリーズCには「レッド・ラパイド」と呼ばれる真っ赤なモデルがあります。
これは輸出相手国であるアメリカにわたったP.ヴィンセントがインディアン社からの注文を受けて制作されたモデルですが
わずかに20台ほどが作られました。
アメリカへの輸出において、HRDがハーレー・ダヴィッドソンとの関連を誤解されるとの風評により
52年に社名が「ヴィンセント・エンジニアーズ」に改められ、
エンジン各部にはそれまでのHRDに変わりVINCENTの名が刻まれることになりました。
Mad Sugita



製作にあたって:
今回のモデルは、そのVINCENTのロゴがついたレッド・ラパイドです。
HRDのロゴが削り落とされただけのレッド・ラパイドもありますが、現在では生産された20数台の他にも

所有者の手によって赤に塗りなおされたラパイドもあり、どれがオリジナルだか分かりません。
赤に塗装されている部分もモデルによって様々です。
自分の中ではアメリカを突っ走るヴィンセントのイメージは薄いため
フェンダーにナンバープレートをつけたイギリス仕様の赤ヴィンセントにしました。
フィン付きダブルブレーキも本来はブラック=シャドウだけのものです。

 製作開始にあたって、まずオーナーにブラック・シャドウではなくレッド・ラパイドを勧められました。
1/12というサイズを考えれば赤でなくては目立たないとのこと。結果的に大成功でした。
またフォークのサイズで悩めばエバーグリーンのプラパイプを送ってもらい
エンジン本体の塗装にあたり大失敗(製作過程を参照して下さい)の際には、部品の提供をして
ZIPP斉藤氏にホワイトメタルのキャスティングをお願してくれ、
また、何と言っても旋盤を頂いたことが製作の幅を大きく広げました。本当に世話になりました。
もちろん斉藤さん、素晴らしいメタルをどうも有難うございました。
エンジン、ペダル類、リムとどれをとっても最高の出来です。
また、アメリカで現在赤いヴィンセントを所有している方にもアドヴァイスをいただきました。

製作開始から10ヶ月もかかりましたが、皆様のおかげで素晴らしい赤ヴィンセントを作ることができたと思います。
キットの改良箇所はほとんど全てです。
ここには書き切れませんので、とっても長くなってしまった製作過程をご覧下さい。

Vincent in Progress
オーナーの感想:
「今回の完成は本当に嬉しく、満足感、充実感に溢れています」
「全く悔いが無いとまでは行きませんが、今の技術で出来ることは殆どやったように思います」
と彼がメールに書いてきましたが、本当に見事な仕上がりです。
1/12とはとても思えないエンジンやホイール廻りのディティール・アップは
神々しい程の美しさで思わず魅とれてしまいましたので、皆様にも大きな画像でお見せすることにしました。
勿論全体のバランスも修正され、いうことなしの出来です。
彼が本当に作りたかったヴィンセントですから
10ヶ月かかったとはいってもこれだけ素晴らしい作品が完成したのは私もとても嬉しいです。

友人に「Mad Sugita」 と改名されてしまいましたが、彼はやはり「GOD HANDS」 の方が似合うように思います。

Kim's House Garage Owner

キットについて: 
素晴らしいキットです。
部品数も多く、一つ一つが丁寧に作れており 
普通に組むだけでも充分に楽しめます。
原型は相当マニアックな方が作られたと思われますが 
繊細な部品に比べると、タンク形状、ライトハウスの大きさ 
フロントフォークの取り付けなどプロポーションに関わる重要な部分は 
不思議な仕上がりになっています。

オリジナルはMatch Box社から出たものでしょうか。
その後、レベルからも発売され、昨年ドイツ・レベルから再販されました。
再販品はモールドが甘く、タイヤなどゴムの質も悪いです。
デカールのメーターは妙なものが入っています。
今回は、キットのモールドを活かす部分にはMatchboxのものを 
デカールや強度の必要なところは(と言ってもほとんど金属に置き換えて 
しまいましたが)再販のものを使用しました。

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