当ガレージ・コレクションから、こいつは珍品だと思うキットをご紹介します。
あくまでもオーナーの個人的思い入れですので、解説の不備や誤りはご容赦ください。
日本模型
Honda Super Cub
スケール1/15 当時の定価100円
信じられない。
わがサイトのパートナーGod Hands SUGITA氏から 
プレゼントされて、数日経つというのに、
まだこのキットが手元にあるというのが信じられません。
そのくらい長い間、約40年探し求めてきた 
幻のキットが今ここにあります。
これこそ超珍品!? (世界中に)おそらく完成品で数台。
箱付きの未組立キットとなると、これの他には 
NYCのコレクターが所有する1台(SUGITA氏調べ)、
平野克己さんが所有する2台(ZIPP氏調べ 
・・・素晴らしい状態のモノらしいです) 
ぐらいだろうという超レアモノのキットです。

素晴らしいキット。
この日模のスーパーカブ・キットは、1959年か60年に 
定価100円で発売。僅か数年で姿を消しました。
日本のプラモデルというものが玩具の域を出なかった当時、
このキットは1/15の本当のスケール模型であることに 
まず驚かされます。
殆ど同時代に登場している日東科学のメグロの白バイスズキ50レーサーとは雲泥の差の精密感。    
まさにオーセンティック・スケールモデルと称すべき模型キットです。        
そして6色(ブルー/クリームの車体色。ブラウンのシート。シルバーのホイール、エンジンと補機。ゴム製タイヤの黒。    
そしてウインカー等のクリア・オレンジで計6色。付け加えればヘッドライトのクリアパーツで7色になります)に塗り分けられたパーツ構成
(クリームとブラウンは塗装。 メッキ部品はありません)の緻密さ、豪華さにまたびっくりします。   
塗装することが一般的でなかった当時のプラモデルの、究極の組立キットでしょう。    
組立説明書も懇切丁寧なもので、当時から日模の技術力の高さが分かります。    
パッケージも、実車写真を使ったシンプルな白ベースに英文HONDA SUPER CUBのロゴと、お馴染 赤三角の日模マーク。    
田宮の白バックが登場する数年前に、今でも充分通用するこのモダンさで登場していました。    
売れなかった。
日模は昭和26年12月26日に設立され、当時の社名は日本模型航空機工業
株式会社といいました。プラモデルへの参入は昭和34年(1959年)に出した
伊号潜水艦からと伝えられていますので、このスーパーカブはプラモ参入後の
何作目かに当たる相当初期のキットです。
ホンダのスーパーカブ(実車)は1958年発売です。
今でこそ出前持ちなど商用バイクの代表ですが 当時は若者や女性を狙った
おしゃれなバイクの位置づけでした。
そんな意味で、日模のカブ・キットへの期待感はかなり大きかったのではないで
しょうか? しかし売れなかった。
今ですらバイクのプラモデル自体はそう大きなマーケットではないのに、40年前
ですから尚更でしょう。しかも夢のない?50ccの実用バイクですから、売れる
ほうが不思議です。数年で忽然と店頭から姿を消します。
その後は全く消息不明。
あるマニアが日模の栃木工場まで探しにいったそうですが、金型すら見当たら
なかったという記事を見たことがあります。
期待に反した売れ行きの悪さに金型まで壊してしまったのでしょうか。
日東科学やナガノのバイク・シリーズが、パッケージを変えて何度も再販されて
いたのに比べて、このスーパーカブは知る人ぞ知る幻のキットとなりました。

その後・・・
高校生時代、私はこのキットと出会い、バイク・モデルの面白さに触れました。
他社のバイク・キットとは全然違った本当のスケールモデルらしさに何台も、
浅間レーサー仕様等にもして楽しみましたが、ある時気がつくと既に店頭から
消えていました。
数十年の間、国内外の様々なキットを収集する過程で、常に頭に浮かんでいたのは
あのスーパーカブ・キットでした。でもそれは、数少ない情報でしか知ることが
出来ない本当に幻となっていました。それが今SUGITA氏のお蔭でここにあるの
ですから、私の感激・感動ぶりもご理解いただけると思います。

入手キットの内容
BOXは多少の破れ、傷はありますが、40年前のものとは思えない綺麗な状態。
一部組立済みですが、パーツもヘッドライト・クリアを除いて完全に揃っています。
今のT社やA社と比較するのは酷ですが、それでもスケールモデルとして充分に
通じるパーツ構成です。
OHVエンジンもケーシングを含めて見事にその特徴を捉えていますし、特にレッグ
シールドなどは、実車のC100系の妙な形の雰囲気を出したよい出来栄えに拍手を
送りたいぐらいの代物です。
これを作り上げるのはさすがに抵抗がありますので、作るとすればレジンで複製
してってことになるんでしょうが、日模からOKさえ貰えれば複製品を販売して
その素晴らしさを皆さんと分かち合いたいぐらいの気持ちです。
Kim's House Garage Owner
組立て説明書
100円キットとは思えない懇切丁寧な
説明書にも驚かされます。
全体のパーツ配置図を上部に載せ
その工程を8段階で解説しています。
末尾は実車のスペックで締め括ると
いう親切なものです。

資料-1 Model Cars 87年1月増刊号(企画室ネコ)
このころのモデルカーズ誌には、平野克己さんが日本プラモ今昔物語を連載されており、其之参がバイクモデル。
この中にニチモのスーパーカブは日本における最も初期のバイクキットとして紹介されているが、実物パッケージ資料等はない。
資料探しに手を尽くしたが見つからなかったこと。「恐らくキット(完成品さえも)は現存しないものと思われる」
資料-2 Model Cars 87年8月増刊号(企画室ネコ)
その記事に対し名古屋のHさんが、昔父親が作ったものとしてモデルカーズに紹介。完成品が美しく写真で紹介されている。
資料-1、2ともスケールは1/14と紹介されているが、パッケージにある通り、1/15の誤り。
しかし、この完成写真(素組み)を見ても、いかに優れたキットであったかが分かる。
資料-3 国産モーターサイクルのあゆみ(八重洲出版)
1958年ホンダ・スーパーカブの初登場。
藤沢副社長が仕掛けたスーパーカブの成功談はよく知られているが、この登場時に誰が21世紀まで生産され、売られ続けると想像できたろうか。
それに引き換え、この日模のスーパーカブの寿命の短かったことを想うと、少し悲しい・・・・。

Special Thanks to Mr.Koji Sugita


元:日本模型
スーパーカブ号
スケール1/15 定価???円
夢のようなキット
左の写真を見て下さい。
ついについに、私の青春時代を飾った日模の
1/15 スーパーカブ復刻版が登場しました。
パッケージはその当時を偲ばせるセピア色に
C100のイラスト。
当時の女性が乗ったカブのモノクロ写真も
泣かせます。
元キットに敬意を表してでしょう。日模の
三角マークも忘れていません。
凄いですね。驚きました。
こんな復刻キットがいつの間に誕生していた
のでしょう?
中身はどうだ?
さて、いかにも復刻キットらしい薄ダンボールでできた箱を、開けて
見ましょう。
ビニール袋に丁寧に包まれたパーツが沢山目に飛び込んできます。
精度の高いアイボリー・ホワイトのパーツは懐かしいあの日模のキット
そのもの。勿論元の金型はない筈ですから、キットを原型として忠実に
工業用レジンで成形したものでしょう。
これは素人ではとても無理な高度の複製技術です。
透明パーツも元キット同様オレンジ色の成形で入っているのも嬉しい
ですねえ。
あら、私のキットでは紛失していたヘッドライトのレンズまで入って
いますよ。泣けてきますねえ。
←メタル・キャスト部品だ!
細かいパーツはホワイト・メタルでキャストしてあります。
一般的なレジン復刻とは異なり、タイヤもきちんとゴムで出来上がって
いますし、元のキットでは左右張り合わせのインジェクションだった
前後ホイールはハブとリムに分けてキャスト。スポーク張りさせると
いう精密で豪華なキットに仕上がっています。
腕のいいモデラーなら、C100初期型に見られる内張りスポークも再現
できるというもんです。
なんと贅沢なキットなんでしょう!

←インストラクション
説明書も当時のまま印刷されています・・・・・、ん?待てよ。
本田宗一郎がいるじゃあないの。
「作る前にしっかり読んでくれ」なんて言ってます。
復刻者のジョークも感じるキットですね。
おそらく元キットは世界に数個しかありません。
アメリカのオークションでは$850ドルにもせり上がったという、超レアなこの日模のスーパーカブ 1/15。
こんな凄い復刻キットが登場した、としたらどうします?
実は
このキットは私の還暦祝いとして、MAD杉田氏、ZIPP齋藤氏、
FLAVOR和田氏、SOUTAX金子氏、という私の若い友人グループが
私に内緒でこっそりレプリカ作りをしてくれた、全くの私のための
わずか10個の私家版キットなのです。
そして私の誕生日の過ぎた11月23日、私の家で突然のサプライズ
として還暦の60歳に合わせ6個を贈呈してくれました。
まあ私のその驚きと喜びは今でも忘れません。
私家版キットをご紹介するのも自慢するようで気が引けますが、
思い切って自慢しちゃいます。
日模スーパーカブ復刻メンバー
左よりZIPP齋藤氏 SOUTAX金子氏 MAD杉田氏 FLAVOR和田氏
サプライズに喜ぶ還暦オヤジ
驚いたし、感激したし、嬉しかったし・・・・・。
このHPを読んでくれている諸氏には説明の用もないと思いますが、MAD
杉田氏を除き、彼らは全てその道のプロフェッショナルです。
MAD杉田氏が殆どプロ以上の技術を持っているのは言うまでもありませんし
何度か交遊録に登場してくれているSOUTAX金子惣太氏は 工業製品の造形・
原形製作者として第一線で活躍しているプロフェッショナルです。
こんな超多忙なプロが私のために、仕事の合間にコツコツと内緒でこんな素敵
なキット復刻をしてくれていたかと思うと、年を経た私の胸も熱いものがこみ
上げてくるようです。
還暦祝いはあちこちでしてもらいましたし、赤いプレゼントも沢山貰いましたが、
なんといっても最高のプレゼント、一生の思い出となる還暦祝いでした。

作業分担は以下のように担当したようです。

構想企画 MAD杉田 & ZIPP齋藤
型取り、レジン・ゴム・透明パーツ成形 SOUTAX金子
リム&ハブ原型製作 MAD杉田
型取り、メタルパーツ・キャスト ZIPP齋藤
パッケージ&説明書イラスト FLAVOR和田

                      (敬称略)
ありがとう ありがとう ありがとう ありがとう 何度いってもいい足りませんが ありがとう。
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