当ガレージ・コレクションから、こいつは珍品だと思うキットをご紹介します。
あくまでもオーナーの個人的思い入れですので、解説の不備や誤りはご容赦ください。
East Germany MK Modelle
1/25 DKW E206 & BMW R62 w/side car
東独のバイクプラモデル2点 スケール1/25
旧共産圏にもバイク・プラモデルがあった。
ゴッドハンドSugita氏の紹介で、旧東ドイツMK Modelle社製の
バイク・プラモデル2点をドイツから入手しました。
えらく古めかしいDKW E206(1926年)とBMW R62(1928年)
サイドカー付モデル。いずれも1/25です。
内容は黒モールドと真空蒸着メッキ(一部グレー)の、それなりに繊細な
パーツで構成されたもの。
売り手の言うところと目視ではパーツは全部揃っているようです。

寝惚けた写真で構成された説明書もそれなりですし、一概に食玩以下とは
いい切れない共産圏プラモ創成期?のぼんやりした魅力を持っています。
製作年度はともに1975年。
当時の販売価格は箱の横にハンコで押してあるDKW 3.90(東独マルク)、
BMWは6.50DDMというのがそれであろうと思います。
東西ドイツ統合までは西ドイツマルクに対し1/5から1/10の価値しか
なかった東DMですから相当安いですが、それでも東独の子供達には
高価なものだったのでしょうね。

この頃 なぜ東独でこれらのバイク・プラモデルが作られたか? について
の歴史的イデオロギー的解説を「某私立高校 世界史教諭 K.S.氏が
寄稿してくれましたので、掲載します。
特別寄稿
1975年 なぜ東独でバイク・プラモデルが作られたか?
メルクリン、シュコーなどの玩具模型メーカーで有名なドイツは、19世紀からおもちゃ産業が栄えており、世界中の需要に応えていました。
しかし第2次世界大戦後、ドイツは東西に分断され、経済統制が厳しかった東独ではおもちゃ産業が衰退していきます。
当時ドイツの玩具模型産業の中心地、今も毎年世界最大のトイショーが開かれるニュルンベルグと、鉄道模型メルクリン社の所在地ヴェルテンベルグの
2つの地域が西独側に位置していたことも大きな理由です。
おもちゃ衰退の例として有名なのはヨハンナ・ハイダ社のテディベアでしょう。
もともとの製作技術は東独地方で古くに生まれたものが、分断後は統制のために生産にいたらず、それを亡命者が西独に伝えたため、会社として復興する
ことができたということです。

東西ドイツがともに国連に加盟したのが73年。その年にイギリス、フランスと国交を回復させ、74年にはアメリカとも国交回復をしています。
人々は資本主義国の文化や生活スタイル、製品に憧れを抱くようになってきます。
この時点で東ドイツは、資本主義国のホビー玩具としてプラモデルが流行しているということを知ったのではないでしょうか。

ところが、当時世界中は石油ショックの影響をもろに受けています。
日本の模型の歴史にも、石油が値上がりしプラモデル生産に影響が出たというような事情が記述されています。
しかし社会主義国としては、影響がないぞ、社会主義国は資本主義国より凄いんだぞと誇示するために(実際には影響があるのですが、世界恐慌などは
社会主義国ソ連などへの影響は皆無でしたから、それを強調しようというわけです)敢えてプラモデル製作を企画したのでしょう。
では、一体何をモデルにするといいのか?
企画する国営企業の役人達は子供達のニーズより上司の顔色、つまり独裁者ホーネッカー書記長や
共産党幹部連中の思春期であった時代にドイツが誇った名車をモデル化したほうが喜ばれると考えた
のでしょう。(ホーネッカーは1912年生まれで、彼自身車が大好きだったようです。もっとも、
壁が崩壊する直前はボルヴォを愛用していたようですが)

候補には当然ポルシェ、VW、BMW、そして自国のDKWがあげられますが、自動車のプラモデルでは
原料のプラスティックを使用しすぎる。(オイルショックの影響は実際にはあるわけですから)
そこで、プラ原料が少量ですむバイク模型に矛先が向けられます。
縮尺は1/25。小さくて更に原料を節約できる上に、その小ささが模型としての技術を誇れますし、
アメリカの模型自動車の縮尺では1/25が大勢を占めていたので違和感もありません。
こうして作られたのが、このDKW E206(1926年)BMW R62(1928年)サイドカー付の2つ
のモデルではなかったのでしょうか。

これらのバイクは世界恐慌前のドイツの経済復興の一役を担った立役者としても知られています。
1924年にフランスによって起こされたルール出兵に対して、ドイツはゼネラルストライキで対処
したため、物価が10年足らずで1兆倍にもなる未曾有のインフレーションを経験しました。
しかしドイツは世界恐慌前に一旦経済状況を戦前のレベルにまでに引き戻しました。
その外貨獲得の中心がこれらのバイク、自動車といった工業部門であったのです。

73年以降石油ショックの影響を受けている東独も、過去と同じように経済復興を遂げようとする
願いもこめて、1920年代のラッキーな立役者を模型化したとも考えられます。
ドイツの工業力を持ってすれば、再び経済的な飛躍は可能だ!っと。(まるでヒトラーの演説ですね)

というのが資本主義と国交を回復した東独が、彼等の威信をかけてあの2つのプラモを作ったと
いう(もしもどこかに書いてあれば信じる人も出てくるだろうと思われる)「勝手な作り話」です。
ただのプラモにこれだけの裏話があるはずもありませんが、歴史の流れに話しが合うちょっと面白い
作り話と自己満足しています。

1933年からフラッグ(?)という会社がヨーロッパでプラモを作っていた、その型が各地に流れた
という話しはどこかで見つけましたが、ソ連やその他社会主義国では、自国のモデルが当時なかった
ので型は買わなかった、という話も一方であります。
社会主義のプラモ事情が解明されるとも思えませんがもう少し調べて、また判りましたら寄稿します。
                                     K.S. Wrote:
ゴルバチョフとホーネッカー書記長
1926年当時の DKW E206広告
モールドも繊細で悪くありません。
特にサイドカーの造形などはなかなかそれらしくて
ちょっと食指が動きますが、私には作れるサイズではありませんね。
こんなバイクが模型化されるということ自体が貴重でしょう。
売れるか売れないかという資本の論理を超越した共産主義国ならではの
車種選択です。私こんなバイクは見たこともありませんでしたから。
製造年月日。共に1975年です。
プライス。
BMW 6.50DDM。DKW 3.90DDMです。
当時の貨幣感覚だといくらぐらいなのでしょう? 

Revell USA
1/25 Motor Cycle Series
スケール1/25 当時の定価$0.49〜
REVELL社は1950年代の始め、世界で最も早くプラスチックモデル・キットを作り始めたメーカーです。
その製品は陸海空に及んでいますが、中でもアメリカ車のスケールキットは、1/25で AMT、JO HAN、MPC 、RENWALL、1/24では
MONOGRAM、LINDBERG、HAWK、RYPOなどのメーカーとともに、大きなスケール模型分野を確立していました。
中でもレベルは、60年代始めに「カスタムカー・パーツ」と称して1/25のV8エンジンやシャシー、タイヤ、バンパー等の部品をパーツで
販売していました。改造ファンの模型好きや子供達が、既製キットを手軽にカスタム化にチャレンジできるようにしていた訳です。
実車のドラッグレーサー改造やカスタマイジングが個人レベルでも盛んに行われ、彼らをバックヤード・ビルダーと呼んでいた頃の話です。
この1/25のバイクキットは、このカスタムカーパーツの一連として販売されたものに端を発しています。
1965 1/2 auto world CATALOG
私が持っている古い資料の一つに、アメリカ・オートワールド社が発行した 
1965年半期の「モデルカー&レーシング・カタログ」がありますが、
カスタムカーパーツと並んで、
トライアンフ、ハーレー、ホンダ、BSAの4機種が載っています。

レベル社のパーツ販売は日本に本格的に輸入されることもありませんでしたし、
アメリカでもあまり成功しなかったようで、いつの間にか消えていきましたが、
この1/25バイクは形を変えてしばらくの間販売されていました。

ホンダはまだ入手していませんが(ついに入手しました。下記参照)、
BSAを組み立てたり他のモールドを見た感想では、
それはそれは素晴らしいデッサンと細部表現で、
当時のレベル、そしてアメリカの高度な金型技術を表しているようです。
その1:BSA Rocket Gold Star / 250 Honda Dream / Harley Davidson Show Bike
BUILD 2 KIT FOR ONLY 5'6 -- 2セット BOX入り
最近オークションで 
BOX入りのホンダとハーレーのショーバイクを入手しました。
まさにハコ入りでとても状態のよいモノです。
40年近く前に手に入れたBSAと同じシリーズです。
こうして積み上げてみると時を超えた出会いのようで、何か感激します。
このレベルの1/25にはトライアンフもありますから 
当然この箱入りのものがあるのでしょうね。
きっとその内手に入るでしょう。
40年前に買ったもの
これが、1960年代後半だったと思いますが、(田宮社長が本の中で
怒っておられた)新橋のステーション・ホビー(確かに感じの悪い店
でした)で購入した第1号のもの。
値段は記憶していませんが確か千円(今の貨幣価値では1万円)程度
だったと思います。
他の車種がカスタムなのに、BSAだけは無改造MODELをモデル化して
います。同じモールドがクロームと黒色で2セット入っており、黒色
の方は当時組み上げてその後紛失しました。
BOXの裏が組立説明書に
なっています。
当時はこんなバタ臭さに
も感激していました。
最近入手したホンダとハーレー
上のBSAと同時期の製品だと思うのですが
こちらはなぜか裏面の説明書のパターンが
全く違います。感心するのはたった2色の
印刷でこんな雰囲気たっぷりのパッケージ
を作るデザイン技巧です。
味わいのあるイラストもいいですね。
クロームパーツと同じカラーモールド
パーツが入っていて2台作れます。
赤がホンダ、青がハーレー。
その2:Triumph Custom Cycle / Harley Davidson Show Bike
当時の定価:クローム$0.69〜$0.79 色モールド $0.49
これが当時パーツ販売されていたスタイルです。きっとアメリカの玩具屋さんや模型店で、フックに吊られて売られていたんだろうなァ、
と想像できますね。同じ形式で、BOXアートにレトロなイラストを描いたトライアンフも、最近入荷しました。その4で見てください。
その3:BSA & Triumph
1982年アメリカ映画「GREASE 2」のライセンス・プロダクツ
当時の定価:不明
キャット・ウーマンでおなじみのミッシェル・ファイファーが主演した超くだらないB級ミュージカル「グリース2」にはクールライダー?が
乗るトライアンフなどバイクが沢山出てきますが、そのライセンス認可を受けてレベルが販売したもの。
BOXアートは異なりますが、中味はパーツ販売のものと一緒です。
ちなみに、このGrease2のライセンス品としては、1/8のトラやホンダもあります。
その4:メキシコ製レベル!?
メキシコのロデラ社とレベルのダブルブランドの1/25トラを発見。
詳細は全く不明ですが、何ともレトロなパッケージが泣かせます。
メキシコのパッケージはいい雰囲気ですねぇ。
テオティワカン文明、マヤ文明のある山奥に、
トラに乗った若い恋人達がツーリングがてら
訪れた、という感じでしょうか?とメキシコを
良く知るGH.Sugita氏も絶賛!?のパッケージ。
紙質も分厚いボール紙で、アメリカの簡便な
ものとは全く違います。
何とも不思議なのが Revell-Lodela のダブル
ネーム(上写真)です。
レベルは世界各国で提携していますが、こんな
組み合せマークは見たことがありません。
あれ?マルサン時代はどうだったっけ??
番外編:AMT 1/25のおまけ
AMTのバイクモデルはない、と思ってましたらありました。
1/25 トラックのオマケにくっついていましたよ。
AMTは今でも元気なアメリカの
カーモデル・キットメーカー。
標準、レーサー、カスタムと3通り
に組み立てられる 3 in 1 という
キット作りが有名です。
バイクでも 3 in 1キットになって
いるのが面白いです。
パーツの感じはレベルの繊細さに
比べて大分劣るようです。
やはりバイクは手慣れていないせい
でしょうか。
シボレーのトラックを作った残りを買いましたので
ボックスもなにもないのが残念なところです。
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