カワサキZ1 900 Super Four
エレール&ナガノ 1/8
ようやく新作に取り掛かれる
ここ1年ばかり妙に忙しくて、サイト更新も模型作りも全く手が付いていませんでした。
やっと少し時間が出来て、先日から2007年製作モデルを物色しています。
● あんまり人の作っていないもの。
● 1/8か1/9の工作の楽なもの。● 資料の集るもの。
● 迫力のあるもの。(私らしいね)
● そしてキットがあるもの。
● 出来れば素性のよいもの。
素性のよいものとは、基本的なデッサンが間違えていないということ。
パーツの精度はあまり気にしませんが、デッサンが違っているものを直すのは実に大変です。
例えばフレームのディメンションが狂っていると、あらゆる部品がその狂ったフレームに
合わせて作られますので、全てが修正対象になるということです。
これは誰かさんと違って (笑) M資質のない私には相当苦痛です。
そんなことで今回選び出したのが、ナガノの1/8カワサキ750RS。形式名Z2。
それにエレールのKawasaki Z1000。
この2台を使って、最初期型Z1か、Z2 (サイドのマークとシートベルト程度しか違わない) の
完璧に見える奴を作ろうか、と思い立ったわけですよ。
またカワサキかよ
「なんだよ、またカワサキかよ」
という声が聞えるようですが無視。
いや別にカワサキに頼まれた訳でも、縁故関係がある訳でもありません。
実はエディ・ローソンの「ゼッケン21」と同時代ということもあって、
Fスペンサーの載ったCB750Fデイトナ(ゼッケン19)を
何とか作りたいなと思っていたのですが、どうにも資料が集りません。
モテギに実車があるのですが
独りで取材にいくのもかったるく時間もありません。
しかし、1/8となるとベースキットはナガノしかありませんから、
苦労するのは分かっているので、これは順延として
正解でしょうね。
ともかく、いまMADがエレールのCB750K1に再挑戦していますので、
私のZ1が出来れば、日本が世界のバイク市場に君臨する
切っ掛けとなった70年代の空冷INLINE4が2台
揃い踏みとなるかもしれません。
上はナガノ、下はエレールの1/8。箱の大きさも中身も相当違います。→
最初の製作過程 2007年5月7日
カワサキZ1(2)を作ろう
正横図写真資料はBIKERS STATION No.197です。
このBIKERS STATIONの1/12正横図は、150%拡大で1/8になり非常に重宝です。
まさにモデラーのための撮影に感謝しています。
前々作のエディ・ローソン車の時も非常に参考になりました。
WEB上で失礼ですが、厚く御礼を申し上げます。
この写真と下のナガノ1/8カワサキ750RSの完成モデルを比較した感じでは、何か
怪しいでしょう。(笑)
写真の撮り方もあるでしょうが、 全体的にデッサンが狂っていると思います。
各部のパーツのサイズも大きな空冷シリンダーも何か変です。
対してエレールは過去製作のキットから、デッサンには大きな信頼を置いています。
しかし残念なことにZ1000は、 Z1発売4年後のフルモデルチェンジ版で、 様々な
箇所がZ1とは異なっています。
そのため基本ベースをエレールとしながらそれにナガノの使えるパーツを
組み込ん
で完璧な? 750RSか 900SUPER FOURを作ろうということ。
「完璧」と何度も書いておりますがこれは私のいう「見た目でそれらしい」程度のこと
です。(笑)
MADのような機械的完成度を目指しているのではありません(できません)ので誤解の
ないよう。
野村勲御大のいう、モデルに絵を描いてそれらしく見せる、という様々な誤魔化し技法
を駆使するやり方ですから。(笑)
キットを検証する
さて、 どうも怪しいぞ、 と思っているナガノと
エレールのキットを比較して検証して見ます。
意外なことにフレームに関しては、そう大きな
差はありません。
強いていうならば全体的な印象はナガノの方が
スッキリ見えていいぐらい。
エレールのZ1000はダウンチューブが2重管に
補強されていることとか、実車にはない横の
補強パイプがあることとか、 マフラー・ステーが
無くなっていることとか、Z1にするためには
改造箇所が多くあります。
しかしスイング・アームの出来のよさやエンジン
(これもエレール)取り付けプレートなどの関係
からエレール・フレームを改造して使うことと
します。
タイヤ
発見しました。
ナガノの最大の問題点はタイヤのサイズです。
1/8で前後輪とも外寸約82mmに対してナガノ
は何と77mmしかありません。
実寸では4cmも小さい。
Z1が17吋のホイール履いたようなものですね。
これでは、あの胸を反らせたようなZ独特の
姿勢は作れません。
その点エレールは、81mmとやや小さいものの、
ほぼ実車通りと言えるでしょう。
タイヤ・パターンはナガノの方がシャ−プで
好感が持てますが、 これはエレール採用で
行かざるを得ません。
しかしエレールはスポーク・ホイールでは
ありませんから、どこかから代用品を探して
こないといけません。
これもまたちょいと面倒ですね。
フレームの修正
二重管になっているダウン・チューブを削り落とす。
実車にない補強パイプを取り去る。
ステアリングヘッド下の補強板を作り直す。マフラー・ステーをナガノから移植する。
エンジンのブラケットを薄めに削ったり穴を開けたり、ヒケを埋めたり。あとはリアスイング・アームをセットするだけ。
スポーク・ホイールを探す
タイヤが小さい(右写真)ので、当然ナガノのホイールは使えません。
仕方なく同じエレールのキットから同寸のスポーク・ホイールを探します。
手近で見つけたのはBMWのポリス仕様車。丁度40穴です。
ホイールだけ調達するなんてちょっと勿体ないですが
完璧な(?)Zを作るために目をつぶりましょう。
本音を言えば「BMWポリス仕様なんてどうせ作らないだろう」です。
リムにする↓
スポークやハブを取り
去ってリムだけにします。
これをZIPP齋藤氏に頼んで
キャストしてもらおうと
いう魂胆。
いつもはアルミ箔を貼る
んですが、今回は他のもの
をお願いするので、一緒に
頼んでみます。
ハブはナガノのもの。
勿論使いませんが、寸法
取りの参考です。
フロント・フォークのチェック
いままで見てきたようにフォークに関してもエレールの方が圧倒的に出来はよろしい。
ナガノは全体的に短く(タイヤ寸法に合わせて)、幅も狭く、特に(ブレーキ・ラインを留める)ロアー・ブリッジも薄い一枚板でとても使えません。
しかしエレールはモデル・チェンジ後の長いボトム・ケースなのに対し、 ナガノは初期型の大きな特徴である短いボトム・ケースとサイド・リフレクター
(写真の赤の丸)を備えています。そこでエレールのブリッジとライト・ステーに、ナガノのボトム・ケースを合わせて決定版を作ることとします。
ナガノのボトム・ケースのえぐり(写真の赤矢印)は埋めないといけませんね。
リア・ショック
これもフロントフォークと
全く同様です。
ナガノはコイルまで綺麗に
成形されていますが私に
とっては不要のもの。
エレールは出来はいいので
すが、やはりサイドのリフレ
クターがないので、これも
またナガノとエレールの
合体で作ることにします。
フロント・フォーク、リア・ショックの原型
これが修正後のフロントとリアのキャスト原型です。
フロントのボトムケースは長さを足し、2mmのシャフトが通る
ようにパイプを埋め込み、裏面のえぐりをエポキシパテで埋め、
ディスクブレーキ取付用のダボの間隔を拡げるなど結構面倒な作業。
左右二つあるから厄介です。
エレールのロウワー・ブリッジには左右のクロームメッキ用の
カバーを作って嵌め込みます。
リアのショック・アブソーバーは上のカバーをナガノのものを
削り込むだけで、下はエレールそのままですから簡単。
原型ですから、同じものを2つお願いすればいいんで、助かります。
さて次回はいよいよエンジンのチェックに入ります。
2回目の製作過程 2007年10月7日
キャスト・パーツの依頼
湘南の若い友人にキャスト名人がいます。
ご存知SWASH DESIGN主宰者のZippこと齋藤マサヤ氏です。
今回のZ1の主な金属パーツを、彼にキャストして貰うことにしました。
左はその依頼パーツです。随分沢山ありますねえ。
ここでもエレールパーツが主体ですが、中にいくつかナガノのパーツを
選択しています。特にリフレクター付きのボトム・ケースやダンパー
ケースは元々エレールにはありません。
あとリアのハブキャップも、エレールはディスクになっていますので
ナガノをチョイス。ちょっと小さいなあ。
キャストを待つ間、エンジンを比較して見てみましょう。
エンジンを比較する
パーツが多ければいい、細かければいいというものではありませんが、1/8
ともなるとデッサンだけでなく、細部に目が行くことは事実でしょう。
ナガノを批判するのは気の毒ですが、エレールの2輪モデルはその意味で
群を抜いています。
私が最近エレールばかり手を出しているのはその素晴らしさからです。
この時代のプラモデルはパソコンは勿論、CAD-CAMを使用している訳ではありません。原型師と呼ばれる人が木型を削り最終モデリングをします。
多分エレールのこのシリーズには、相当バイクが好きで優秀な原型師がいたものと思われます。
それをよく表しているのがこの上の二つの写真。上の空冷フィンやシリンダーヘッドの表現や再現方法は勿論ですが、下のクランクケースはどうで
しょう。 エクゾーストパイプが4本通るため殆ど見えないボトムケースにまで、このような凝った細部表現をするのはやはり好きだということ、
そしてモデラーの気持ちを充分に知った人たちの作品だと思いませんか。
何かこのあたりは田宮の初期のホンダF1-1/12の衝撃と似たような熱気を感じます。
空冷フィンの処理
とにかくZ1を作ろうと決めてから頭の中でずっとずっと悩んでいたのが空冷フィン
の磨き出し。パワフルに見える黒塗りエンジンのサイドのフィンだけが磨かれアルミ
地に光っている、というのが初期型Zの特徴ですし、これをうまく見せないと全体が
ブチ壊しになることは自明の理です。
私のいう肝(キモ)ですな。
クロームシルバーの塗りでは上手く質感が出ませんし、へたな塗りではあの繊細な
フィンの細さが表現できません。
そして辿り着いたのがアルミ箔貼り。
アルミテープを1.5mm程度に細く切って貼り付け馴染ませてから全部再度黒塗りする、
そしてエッジだけを磨きだそうというやり方です。
果たして目論み通り行きますかどうか?(笑)
キャスト・パーツが出来た!
Zippに頼んだキャスト・パーツができてきました。
実は彼が7月末には作ってくれたのですが
開ける暇もありませんでした。マサヤ君申し訳ない。
いつもながら素晴らしい出来上がりで、
蒸着メッキやアルミ箔貼りとは比較になりません。
まるで重量感が違うのね。
しかしもう普通のプラモデラーではなくなって
しまったような、申し訳ないような気もします。(笑)
黒塗りしたエレールのエンジンパーツと
このキャストパーツに嫌ってえほど穴空けして
0.8mmと1.0mmのアルミパイプを
埋め込む準備をします。
ところでこの写真にはエレールのマニュホールドと
キャブを無造作に付けているんですが、
これがまたとんでもないことになってしまって
いるんですね。
実に困った問題なんですがそれは次回ですな。
エンジンを仮組みする
キャスト・パーツを磨き、ヘックス・ナットやプラスネジ替りの
アルミパイプを埋め込み(ざっと数えたら73箇所ありました)
パーツを揃えます。
上下のカムカバーの間にはガスケット替りに茶色を厚く塗ります。
オイルキャップのキャストを頼むのを忘れましたので
5mmのアルミ棒を削って作りました。
さてエンジンの組立てですが、エレールの説明書によれば
ボトム・ケーシング部とシリンダー部を接着した後では
フレームに載せられらないようです(この方法はよくないね) ので
ここは仮組みとしておきましょう。
ナガノとエレールのエンジン
素組みのナガノと手を入れたエレールを比較すれば
当然のことながらエレールがいいです。
ナガノはシリンダー・フィンのばかデカさ、クラッチカバーの
幅の狭さ、細部のつめの甘さなど全体的なデッサンに不自然さ
が目に付きます。
本物や資料写真と比較すれば、すぐわかるような欠点があるのは
残念です。
でもそれはエレールとの比較があっていえること。
ナガノだけしかなければ、感謝しつつ、一生懸命欠点を直しながら
作っていることでしょう。
そんなことでまた次回。
いつになることやら??