実車とモデルについて:
英国車の隆盛期の最後を飾った名車として名高いのがノートン・コマンドです。
名門ノートン社は戦後さまざまな合併吸収を繰り返した英国モーターサイクル産業の波をもろにかぶり、
1957年AMC(AJS マチレス)グループに吸収されますが、そのAMCが62年に倒産。
やがて66年にノートン・ビリアース社として再生するに至ります。

そのNV社最初の作品であるコマンドはロールスロイス社から引き抜かれたS.バウワー博士を
チーフとする開発チームが僅か9ヶ月で開発したもの。
古いアトラス・エンジンと既存のAMC製ギアボックスとスイングアームを一体化し、
軽量設計されたフレームにラバーマウントするという
従来のモーターサイクル造りの常識を全く破った新しい手法(アイソラスティック機構)で
振動を減らした画期的な作品となりました。
1968年から市販されたコマンドはたちまちベストセラーとなり、
世界最高峰の大型スポーツモデルの称号を獲得しました。

750プロダクション・レーサーは当時のカフェレーサー・ブームの一方の旗頭であった
P.ダンストールのノウハウを買ったNV社がノーヴィル社を設立し、
そこで1970年から71年(72年)に造られたメーカーズ・カフェレーサーです。
スタイルの良さと72年のインターステーツに先駆けて採用されたロッキード社製ディスクブレーキで
人気でしたが、高価であったことと、1969年から市販されたHONDA CB750の人気に押されて
販売台数は少なかったといわれています。

さてこのMAD SPECIALは、P.Racerの特長であるディスク・ブレーキを
わざわざ2.95吋の2リーディング・ドラムに換装するという、手の込んだ改造を行ったものです。
細部の精緻な金属工作といい、その鮮やかなメタリックブルー塗装といい
Mad SUGITAの好みが色濃く反映した見事な作品となっています。

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製作にあたって:

プロヴィーニ氏追悼作品展が行われるということで
よくできたキットと評判の高いコマンドを作ることにしました。
何かと忙しい時期でしたので、少しでも楽をしようという邪な考えによる車種選定です。

ところがコマンドののっぺりとしたディスクブレーキが、どうも好きになれません。
そこでプロダクション・レーサー風コマンドという設定でツーリーディング・ドラムブレーキを自作することにしました。

短期間で仕上げるつもりでしたが
作り始めてしまえば些細なことにまで気になってしまうのは変えられぬ性分。
Norton Commando という洋書を買い、オーナーズマニュアル、パーツマニュアルを取り寄せ
プロダクションレーサー風の実車写真をネットで拾い集めながらの製作となりました。
完成度はともかくとしても、この資料集めと実車研究(というほどのものではありませんが)が
楽しみの一つでもあります。

キットのフレームはほぼ正確なようです。
外装では、大きくぼってりとしたカウルと丸く短いリアカウル、そして厚ぼったく不思議なRのフェンダーと
高さの足らないタンクに修正を施し、エキパイの長さと角度を変えることでそこそこの形にはなったと思います。

ただ、大きな問題はタイヤの径が合わないこと。フレーム・外装に対して一回り(二周り?)小さいのです。
リムは19吋と大きめのコスモズ製を、タイヤは少々太いですが改良されたイタレリのMANXのものを使用しました。
それでもフロントはまだまだ小さいようです。

エンジンなど金属部は質感を出すために(そして塗装の手間を省くために)
またまたスワッシュのZIPP氏にキャスティングをお願いしました。何度も書いていますが最高です!

結局、純粋に自作となったのは前後ハブとブレーキ、ハンドル、レバー類。
そして初めて挑戦したスクリーンのヒートプレス。

何だかんだと9月から1月までかかってやっと完成しました。
青のメタリックに白のロゴが気に入っていますが、デカールも年末の忙しい時期にオーナーにお願いしたものです。
どうも有難うございました。

オーナーからの一言:
Madが書いているようにこれはプロヴィーニさん追悼作品として製作したもの。
他の参加の方とのバッティングもあるだろうし、
Mad 特有の凝りすぎた作り方を見せることで妙な刺激を与えたくないとの私の判断で、
途中製作記は載せていませんでした。
彼から製作途中の写真とコメントを送ってくれると連絡がありましたので、
近日中に製作記を掲載します。お楽しみに。

Madの作品以外にも沢山の参加作品が
られます。ぜひご訪問下さい。

キットについて: 
残念ながらこのキットは持っているだけで 
中身をよく見たことがありません。
初期の作品とは違って、細部までよくできているという 
評価は良く耳にしますし 
完成作品を見る機会も、他のプロターより多くありますので 
多分そうなのでしょう。
しかし、模型棚の吉田さんも作られていますし 
私がもしコマンドを作るとしたら 
多分1/8のエレールを選んでしまうでしょう。
でもエレールはP.Racerは作っていませんから。
それが問題ですが・・・。

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