実車について:
HONDA CR110 別名カブ・レーシングは
1962年11月の鈴鹿サーキット完成に照準を合わせて発売された50ccの市販レーサーです。
62年は世界グランプリで50ccクラスが始めて開催された年でもあり
スズキ、クレイドラーなど2サイクル50ccレーサーが活躍。
これらに対しホンダは、
4サイクルDOHC4バルブ単気筒49ccのワークスマシンRC110で果敢に挑戦しました。
CR110はそのレプリカ・モデルで、12000rpmで7psを絞り出し
5段ミッションで最高速100km、8段ミッションでは120kmをマークする高性能ぶりを発揮しました。
鈴鹿で開催された第1回全日本選手権を制したセミワークスというべきCR110は、
市販台数も限定されていましたが、
多くのファンは一般市販されたロードタイプ、スクランブラータイプにY部品フルキットを組み込み
まさにレーサーレプリカとしていました。
今でも多くのイベントで見かけられる、最もポピュラーで手軽なレーシング・マシンです。
制作にあたって:
私はこのキットを友人から貰ったのですが、自作したフレームが入っていました。
今、バイク模型に熱中している私ですが
すべての始まりはその自作フレームを見た驚きからと言えます。
フレームの制作については、モデルアート誌(1986.6.No271)「特集:素晴らしきバイクモデルたち」に
載っていることも教えてもらい、結局私自身も真鍮パイプでフレームを自作してみました。
その際、エンジンやマフラーのマウント方法が実車と同じになるように修正しました。
フレームがそれなりに作成できたことに気をよくして、
フェンダーステーやペダル類もすべて自作してみました。
苦労したのはフューエルコックや、リアダンパーの取り付け部分の再現です。
ただ、ここまでこだわったわりには塗装に関する意識が低く、アルミ部分もキットのメッキのままであったりと
完成後の質感はあまりよくありません。
また、ニップルの再現もアルミパイプを無理矢理削って作ったので
汚い仕上がりとなってしまいました。
極細の真鍮パイプの存在を知らなかったためです。
悲しい思い出:
最後に悲しい思い出を2つばかり。
一つは、完成直後に写真を撮ろうとしてカメラのストラップを引っかけ、机の下に墜落させたことです。
その時の傷跡はほとんど消したつもりですが、
フロントフォークの歪みは、修正できませんでした。
もう一つは、最初の作品でバイク模型はこのようにして作るものだと思ってしまったため、
本物に出来る限り近づけなければならないという呪縛のようなものに
今でも縛られてしまっていることです。
キットについて:
グンゼ産業ハイテックシリーズのバイク模型は、ほとんどが
ホワイトメタル部品からなり、質感や重厚感がたっぷり味わえます。
エッチングパーツによる3重構造のチェーンの仕上がりは
1/12のスケールでは最高の部類に属するのではないでしょうか。
ただ全体的に小さな部品がオーヴァースケール気味でありますし
また、メタル部品の修正にもかなり手間がかかるように思われます。
まぁその金属の修正を地道に行うことが楽しいのではありますが。
私はこのハイテックシリーズのファンになってしまいましたが
バイク模型の楽しみを知ったのが最近のため
再販を待つしかないのが悲しいところです。